仕事が終わり、会社を出たトシボ~は、家には帰らず、バスを乗り継いで市の中心部にある大きな総合病院へと向かった。そこに入院している友人を見舞うためだ。
友人の名前は、ダッシュといった。ダッシュは、トシボ~にとって御前崎中学校の同級生であり、また幼なじみでもあった。
病院を訪れると、ダッシュの父の春夫さんが出迎えた。
「お、トシボ~よく来たな!」
「おじさん、こんにちは!」
しかしダッシュの姿は見えなかった。
「あれ、ダッシュは?」
トシボ~は、春夫さんとも幼いころからの顔なじみだった。そのため、今では自分の親と変わらないくらい、ほとんど気兼ねなく話すことができた。
「今、チョット散歩にいってらー」
それで、トシボ~は「お!」と驚いた。
「散歩なんかしていいだ?」
「チ~トならいいら。そんでも、そろそろ戻ってくるぞ!お!ほれちょうど―――」
トシボ~が振り返ると、入口のところにカワジャン姿のダッシュが立っていた。
「お!トシボ~いらっしゃい。いつ来ただ~?」
「ちょうど今。
それより、大丈夫だだー散歩なんかして、暑くないっけ?」
「俺りや~大丈夫。ほれ、これ―――」とダッシュは自分の体を指指してみせた。そこには、真新しいアストンボラージュの革ジャンを着ていた。
「オー
どうしただ~この革ジャン
」
「オウ!浜松の丸井で買ってきた・・・これを着たくてちょっと外へ出たでぃあん」
それでトシボ~は、納得してうなずいた。
「そうか~この革ジャン高いっけらー」
「高いっけ!だけーが今度、グランドホテルでやるクリスマスパーティでベストドレッサー賞、ほしいやん!」
「・・・・・・
」
「お!そんじゃ~俺ぁ~行くで」春夫さんがダッシュに向かって言った。
それから、トシボ~に向き直ると、こう言った「トシボ~後は、頼むな!」
「ヘイ!行ってらっしゃい」
春夫さんが出ていくと、トシボ~は勝手知ったるというふうに自分で冷蔵庫を開け、コップにコーラを注ぐと、ベッドの前のパイプ椅子に腰かけた。そんなトシボ~に、ベッドに戻ったダッシュはこう切り出した。
「それで、どう?トシズの方は」
「うん・・・まあ、まだ始めたばかりだけど、なかなか・・・・な!」
「みんな、あんまり仕事、身がましくやってないら?」
「オウ!そうだでぃあん
みがましくやっているのは、いつも2~3人だな」
「この時期きゃ~しょんないなーそんな会社だもん」
「そうか~」
このダッシュも、実は会社の社長さんだった。しかもダッシュは、トシボ~と違って、1年前から経営者として活動しているベテランだった。
ところが、夏ころ静岡に飲みにばっか行っていたので、胃潰瘍になってしまい入院を余儀なくされたのだ。しかも、そう病状は軽くなく、長期の入院が必要で、手術が必要と言われていた。
これには、ダッシュはもちろん、トシボ~も大きなショックを受けた。トシボ~にとってダッシュは幼なじみであると同時に、文字通りの親友でもあったからだ。
しかし一方でそうした事態は、二人にとっては慣れっこなところもあった。というのもダッシュは若いころからオートバイで事故をしたり、車で事故をしたりして入退院をくり返していたからだ。
入院するのは、いつもこの市立病院と決まっていた。おかげでここは、二人にとっておなじみの場所でもあった。
それでも、トシボ~がここを訪れるのは久し振りのことだった。だから、ここへきて再び入院したことは、二人にとってはやっぱりショックなできごとだった。それでもダッシュは、そうした落胆はおくびにも出さず、比較的淡々と、明るく入院生活を送っていた。なぜなら、担当の看護婦さんがとてもきれいな人だったからだ!ダッシュは、目を付けた女は、必ず食っていた
そんなダッシュに、トシボ~はバックから本を取り出すと、それを開きながら言った。
「実は、今日は聞きたいことがあって来たんだ」
「何!その本?」
「まあ!聞けやい!!質問に答えたら教えら~」
「オウ!わかった」
「ほんじゃ~質問です!―――トシズとは、一体なんでしょう?」
「ハア~?」
「トシズとは何か?トシズの事業とは何か?何であるべきか?」
「ちょ、ちょ待てやい。お前いきなり何言ってるだ~?」ダッシュは、怪訝そうな顔をして言った。
「ちゃんと説明しろい!意味わからんし!」
「いや、あのな-‐‐‐」とトシボ~は、本の表紙を見せながら言った。「実は、こういう本を買っただけーが」
【もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら】だ~???
「そう。社長やるにあたって、何か参考になる本はないかなと思って買ったでぃあん」
「へえ。どうだだ?参考になる?」
「オ・・・・まだ分からんだけーが。だけーん!これに書いてあっただけーが、マネジメントというのは社長の仕事な・・・・・をするためには、まず初めに、「組織の定義づけ」から始めにゃーいかんみたいだぞ」
「組織の定義づけ?」
「そう。<もしドラ>には、こうあるでぃあん」
あらゆる組織において、共通のものの見方、理解、、方向づけ、努力を実現するには、「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠である(24頁)


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