第1章

トシボ~は、ダッシュとは幼なじみだったが、ダッシュが車好きというのは、暴走族に入るまで知らなかった。暴走族に入った時、いきなり「俺や~車が好きだで、将来モータースにでも成るで」と言われ、そこで初めて知ったのだ。smile
 しかし、その時はモータースになろうと思った理由を詳しくは尋ねなかった。そして、それ以降も二人の間でこの話題が出ることはなかった。だから、トシボ~はこの時まで、ダッシュがどうしてモータースになろうと思ったのかを詳しくは知らなかった。

 ところが、その質問を受けたダッシュは、なぜか顔色を青くした。ひざにかけていたタオルケットの端をぎゅっと握ると、トシボ~から顔を背け、ベッドの横の壁を見つめた。
 それでトシボ~もダッシュの様子がおかしいことに気が付いた。
 「ダッシュ?」
 しかしダッシュはトシボ~の言葉など聞こえなかったかのように、しばらく何も答えなかった・・・・・・

それから間があって、ようやくそろそろと振り向くと、こう言った。
「・・・・・実は、さっきからクソがしたいでぃあん」
「は?」
 ダッシュは、トシボ~の顔をまっすぐ見つめると、一言一言、かみしめるように言った。coldsweats02
「これは、本当はもっと早く話したいっけでぃあんcoldsweats02さっきからずっとしたいっけでぃあん
なかなか勇気がなくて・・・・・coldsweats02 だけーが!今決心した。悪いけーが外に出ててくりょう~」
「はあ?」coldsweats02 「半分出て~る!」crying ・・・・・・・・・・






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「つまりトシズをマネジメントするためには、まず!トシズはどういう組織で、何をするべきか――を決めなきゃ~ならんでぃあん」
「ほほう。ふうむ・・・・なるほど、それで「トシズとは何か?」って聞いただな」
「オウ!そうだだでぃあん。ほんでな、これん決まらにゃ~先へ進めんでぃあん・・・さっぱり分からんわ・・・・crying
「トシズって、水道工事をするための組織じゃないの?」
 ダッシュは、何気ない調子でそう言った。しかしトシボ~は、残念そうな顔をしながらこう答えた。
「それん違うでぃあん{もしドラ}にゃ~こうあるでぃあん」
 自らの事業は何かを知ることほど、簡単でわかりきったことはないと思われるかもしれない。
鉄鋼会社は鉄をつくり、鉄道会社は貨物と乗客を運び、保険会社は火災の危険を引き受け、銀行は金を貸す。しかし実際には、「われわれの事業は何か」との問いは、ほとんどの場合、答えることが難しい問題である。わかりきった答えが正しいことは殆んどない。(25頁)
「つまり、「水道工事をすること」というのは、ここでいう「わかりきった答え」だだ。だもんでそりゃ~違うと思うぞ」
 「ひとが、入院してるにめんどくさい質問もってきやがって・・・・わけわからんし」
「だら!だもんで俺も、ここで行き詰まったでぃあん。トシズって、一体なんなんだろう?―――って。それで、ダッシュに聞きゃ~何か分かるかもしれんと思って、今日聞きに来たでぃあん・・・・」
 それから二人は、いろいろと考えてみた。・・・・・・・お互いに思うことを言い合って、意見を交換した。しかし、いくら考えてみても、納得のいく答えは見つからなかった。
 そこでトシボ~は、気分を変えようと、今度は別の質問をしてみた。
「そういや~、ダッシュはなんで商売始めたの?」

仕事が終わり、会社を出たトシボ~は、家には帰らず、バスを乗り継いで市の中心部にある大きな総合病院へと向かった。そこに入院している友人を見舞うためだ。
 友人の名前は、ダッシュといった。ダッシュは、トシボ~にとって御前崎中学校の同級生であり、また幼なじみでもあった。
 病院を訪れると、ダッシュの父の春夫さんが出迎えた。
「お、トシボ~よく来たな!」
「おじさん、こんにちは!」
しかしダッシュの姿は見えなかった。
「あれ、ダッシュは?」
 トシボ~は、春夫さんとも幼いころからの顔なじみだった。そのため、今では自分の親と変わらないくらい、ほとんど気兼ねなく話すことができた。
「今、チョット散歩にいってらー」
それで、トシボ~は「お!」と驚いた。
「散歩なんかしていいだ?」
「チ~トならいいら。そんでも、そろそろ戻ってくるぞ!お!ほれちょうど―――」
トシボ~が振り返ると、入口のところにカワジャン姿のダッシュが立っていた。
「お!トシボ~いらっしゃい。いつ来ただ~?」
「ちょうど今。heart04それより、大丈夫だだー散歩なんかして、暑くないっけ?」
「俺りや~大丈夫。ほれ、これ―――」とダッシュは自分の体を指指してみせた。そこには、真新しいアストンボラージュの革ジャンを着ていた。
「オーwobblyどうしただ~この革ジャンwobblywobbly
「オウ!浜松の丸井で買ってきた・・・これを着たくてちょっと外へ出たでぃあん」heart01
それでトシボ~は、納得してうなずいた。
「そうか~この革ジャン高いっけらー」
「高いっけ!だけーが今度、グランドホテルでやるクリスマスパーティでベストドレッサー賞、ほしいやん!」
「・・・・・・coldsweats02
「お!そんじゃ~俺ぁ~行くで」春夫さんがダッシュに向かって言った。
それから、トシボ~に向き直ると、こう言った「トシボ~後は、頼むな!」
「ヘイ!行ってらっしゃい」
春夫さんが出ていくと、トシボ~は勝手知ったるというふうに自分で冷蔵庫を開け、コップにコーラを注ぐと、ベッドの前のパイプ椅子に腰かけた。そんなトシボ~に、ベッドに戻ったダッシュはこう切り出した。
「それで、どう?トシズの方は」
「うん・・・まあ、まだ始めたばかりだけど、なかなか・・・・な!」
「みんな、あんまり仕事、身がましくやってないら?」
「オウ!そうだでぃあんcoldsweats01みがましくやっているのは、いつも2~3人だな」
「この時期きゃ~しょんないなーそんな会社だもん」
「そうか~」
 このダッシュも、実は会社の社長さんだった。しかもダッシュは、トシボ~と違って、1年前から経営者として活動しているベテランだった。
 ところが、夏ころ静岡に飲みにばっか行っていたので、胃潰瘍になってしまい入院を余儀なくされたのだ。しかも、そう病状は軽くなく、長期の入院が必要で、手術が必要と言われていた。
 これには、ダッシュはもちろん、トシボ~も大きなショックを受けた。トシボ~にとってダッシュは幼なじみであると同時に、文字通りの親友でもあったからだ。crying
 しかし一方でそうした事態は、二人にとっては慣れっこなところもあった。というのもダッシュは若いころからオートバイで事故をしたり、車で事故をしたりして入退院をくり返していたからだ。
 入院するのは、いつもこの市立病院と決まっていた。おかげでここは、二人にとっておなじみの場所でもあった。
 それでも、トシボ~がここを訪れるのは久し振りのことだった。だから、ここへきて再び入院したことは、二人にとってはやっぱりショックなできごとだった。それでもダッシュは、そうした落胆はおくびにも出さず、比較的淡々と、明るく入院生活を送っていた。なぜなら、担当の看護婦さんがとてもきれいな人だったからだ!ダッシュは、目を付けた女は、必ず食っていたpunch
 そんなダッシュに、トシボ~はバックから本を取り出すと、それを開きながら言った。
「実は、今日は聞きたいことがあって来たんだ」
「何!その本?」
「まあ!聞けやい!!質問に答えたら教えら~」
「オウ!わかった」
「ほんじゃ~質問です!―――トシズとは、一体なんでしょう?」
「ハア~?」
「トシズとは何か?トシズの事業とは何か?何であるべきか?」
「ちょ、ちょ待てやい。お前いきなり何言ってるだ~?」ダッシュは、怪訝そうな顔をして言った。
「ちゃんと説明しろい!意味わからんし!」
「いや、あのな-‐‐‐」とトシボ~は、本の表紙を見せながら言った。「実は、こういう本を買っただけーが」
【もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら】だ~???
「そう。社長やるにあたって、何か参考になる本はないかなと思って買ったでぃあん」
「へえ。どうだだ?参考になる?」
「オ・・・・まだ分からんだけーが。だけーん!これに書いてあっただけーが、マネジメントというのは社長の仕事な・・・・・をするためには、まず初めに、「組織の定義づけ」から始めにゃーいかんみたいだぞ」coldsweats02
「組織の定義づけ?」
「そう。<もしドラ>には、こうあるでぃあん」

あらゆる組織において、共通のものの見方、理解、、方向づけ、努力を実現するには、「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠である(24頁)baseball










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 このような資質を欠く者は、いかに愛想がよく、助けになり、人づきあいがよかろうと、またいかに有望であって聡明であろうと危険である。そのような者は、社長としても、紳士としても失格である。
 社長の仕事は、体系的な分析の対象となる。社長にできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、初めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。(18頁)good
 トシボ~は、その部分を繰り返し読んだ。特に、最後の所を繰り返し読んだ。
―――才能ではない。真摯さである。
それから、ポツリと一言、こうつぶやいた。
「・・・・・真摯さって、なんだろう?」
ところが、その瞬間であった。突然、鼻から鼻血が出てきた!wobbly
それで、トシボ~はびっくりさせられた。なんで鼻血が出てきたのか、よく分からなかったからだ。しかし原因はすぐにわかった。トシボ~は、本を読むとき鼻くそを掘る癖があるからだ。その時も感動のあまりガムシャラに掘っていたにちがいないsign01
 おかげで、トシボ~はもうそれ以上本を読み進めることができなくなってしまった。そのため、本を閉じると机の上に突っ伏し、しばらく鼻血が出るのに任せていた。
 読み始めてからだいぶ時間が経ち、もう日も暮れかけてうす暗くなった自分の部屋だ、トシボ~は1人、しばらくさめざめと鼻血を出し続けていた。wobbly

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トシボ~は、そこに書かれていることを完全に理解できたわけではなかったが、何かupwardright
とても重要な、大事なことが書かれていうのはよく分かった。sun言葉の一つひとつが、とても重く、また貴重なものとして受け止められた。
 それに魅了されたトシボ~は夢中になって読み進めていった。ところが、四分の一ほどのところまで来た時だった。不意に、心にドカーンと右ストレートが入った感覚を覚えた。punch
 それは、本の中に書かれていたある言葉に目が留ったからだった。そこにはこう書かれていた。
 マネージャー「社長」の資質(16頁)
それで、ドカーンとしたのである。
 この言葉は「マネージャー」(社長)という章の中にあったものだった。マネージャー「社長」についてあれこれ書かれている中にあった、見出しの一つだった。
 これを見て、トシボ~は思った。
―――きっと、ここにはマネージャー「社長」になるために必要な資質が書かれているに違いない。そしてこう心配した。coldsweats02
―――もし、俺にそれがなかったらどうしよう!crying
トシボ~は、それだけは絶対に避けたいと思った。それは、自分に社長失格の烙印を押されるようなものだと思ったからだ。そして「トシズを年商10億円企業にする」という自分の目標も無理だと宣言されるようなものだと思った。
 おそらく、他の誰かからそうしたことを言われても、ほとんど気にしなかったろう。事実、トシズのみんなには否定されたが、ちっとも気にしていなかった。
 しかし、この本からだけは、そうしたことを言われたくなかった。それはこの本はドラマになるくらい読まれているものだということもあったけれど、トシボ~自身、この本に大きな魅力を感じていたからでもあった。baseball
 もっといえば、この本を好きになりかけていたのである。だから、その好きになりかけていた本から自分の社長としての適性を否定されるのは、絶対に避けたいと思ったのだ。fuji
 それで、トシボ~はドキドキしながらその先を読み進めた。すると、そこにはこうあった。


人を管理する能力、議長役や面接の能力を学ぶことはできる。管理体制、昇進制度、報奨制度を通じて人材開発に有効な方策を講ずることもできる。だがそれだけでは十分ではない。根本的な資質が必要である。真摯さである(17頁)good


その瞬間、トシボ~はワンツーパンチを打たれたようなショックを覚えた。そのため、思わず本から顔をあげるとしばらく呆然とさせられた。  wobbly  wobbly 
 しかし、やがて気を取り戻すと、再び本に目を戻し、その先を読み進めた。すると、そこにはこうあった。
最近は、愛想よくすること、人を助けること、人づき合いをよくすることが、社長の資質として重視されている。そのようなことで十分なはずがない。
 事実、うまくいっている組織には、必ず一人は、手にとって助けもせず、人づきあいもよくないボスがいる。この種のボスは、とっつきにくく気難しく、わがままなくせに、しばしば誰よりも多くの人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない。


 


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もしドラ~トシズ版

もしトシズの社長が「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら」を読んだら!

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